Dr. 秋山の歯科治療に対する思い
歯の健康を考えたら「咬合」は避けて通れない
Q. 秋山先生は「咬合」を重視されています。咬合に注力するのはなぜでしょうか?
A. 話はさかのぼるのですが、大学卒業後の勤務医時代に、岡本浩先生が主催する歯周病研修に参加して、歯周病治療の大切さを知ったことがはじまりです。
その後、もっと勉強したくてアメリカのUSC(南カリフォルニア大学)歯周病科に留学して、日本に戻ってきて開業しました。
でも、あれだけ学んだ歯周病治療をおこなっても歯周病の進行が止まらないという症例があったのです。
なぜ歯周病治療をしても歯周病は止まらないのか……と原因を追究したら、咬合に原因があるとわかりました。
いくら歯石を取っても咬合が悪ければ歯周病は完全には治らないこと、そして咬合は他にもいろいろなところに影響を及ぼすことがわかりました。
被せものを入れるにしても、長持ちさせるには咬合は避けて通れないのです。
それから咬合の勉強と治療に力を入れるようになりました。
咬み合わせの中の咀嚼運動を検査するシロナソアナライザーなどを使って、目に見えて変化がわかるような咬合治療を進めています。
今では当院の治療の柱になっていますね。
安いインプラントが心配な理由とは?
Q. 最近の歯科界の動向として、安いインプラントが増えています。このことについてはどうお考えですか?
A. 今の世の中、安いから質が悪いということはあまりないと思います。
ですが、安いインプラントの供給元への不安があります。
安いインプラントは新進気鋭のメーカーであることが多く、それゆえに経営も不安定です。
インプラントは壊れることもあるので、壊れたときにメーカーがなくなっていて直すパーツがない……というのが一番心配ですね。
歴史が浅いメーカーは数年のうちになくなっていることもあるので、歴史が長くて安定しているメーカーのほうがいいと思います。
以前、こんなことがありました。
アメリカでインプラントを入れたという患者様が、インプラントが壊れたと当院にいらっしゃったんです。
そのインプラントを調べたら、そのメーカーはすでに倒産していました。
偶然、インプラントを固定するネジと同じサイズのものを扱っているメーカーがあったのでそのパーツを使いましたが、実際はそう上手くはいきません。
インプラントはメーカーごとに規格が違っていて、互換性があるものはないですからね。
安いインプラントが悪いというよりは、歴史が浅く普及している数が少ないメーカーだと何かあったときに大変です。
修理するパーツがしっかりあるメーカーが理想的ですね。
マイクロスコープや自費治療で患者様に本当の満足を
Q. 秋山先生はマイクロスコープを積極的に活用されていますが、日本ではあまり普及していません。この現状をどう思われますか?
A. そうですね。やっぱりまずは値段が高いからでしょう。
安いものでも100万円くらい、高いものだと1,000万円くらいしますからね。
あとは、マイクロスコープを使って治療をしても、保険点数は変わらないのが大きいと思います。
マイクロスコープを使うと、よく見えないまま感覚で削るのとは違って、確実に削ったり取り除いたりするのでどうしても時間がかかってしまうのです。
かかる時間と保険点数を天秤にかけると積極的になれないのが現状だと思います。
そして、練習が必要なこともありますね。
レーザーやCTのように買ってすぐに使えるものではないので、使いはじめても練習をしないと実践で自分が思った通りに使いこなせません。
そこにかかる労力もネックになっているのではと感じます。
Q. マイクロスコープにかぎらず自費治療を推奨される医院が増えていますが、それはなぜでしょうか?
A. 保険治療は法律にのっとった治療で、制限があります。
患者様に合った一番良い治療を提供したくても、保険ではできない場合もあるんです。
良い材料が出てきても、それがすぐに保険適用になるわけではありません。
たとえばインプラントは何十年も前からあって、良い治療だということが言われていますが、まだ保険適用になっていません。
白いセラミックはすごくきれいで良いものですが保険適用外です。
どんなにいい治療だったとしても保険適用外のものもあります。それってすごくもったいないと思いませんか。
自費治療は使う材料、薬に制限がないので、患者様に合わせて選べて、幅広く質の高い治療を行えます。
もちろん保険治療に比べると費用はかかってしまいますが、患者様の満足度は高いと確信しています。
一人の歯科医師として皆様にお伝えしたいこと
Q. 現在の歯科界について感じることをお聞かせください。
A. まず、歯科医院の数のことをいえば仕方ない部分もあると思います。
歯科医は医科のように大きい総合病院で勤務できることはほとんどないので、自分で開業するしかありません。
だからどうしても医院が増えます。前よりも減少傾向にあるといわれていますが、それでも多いですね。
それ以上に問題なのは、歯科技工士の数が減っていることです。
技工士学校を卒業しても9割が技工士にならないので、これからは技工士との連携に力を入れないと、歯科医自身の生き残りも難しくなってくると思います。
Q. 最後に、このホームページをご覧になっている方へのメッセージをお願いします。
A. 歯は何のためにあるかというと、食事を楽しむためです。
食事は人間にとって最後の楽しみだと思います。
若いうちはファッションとかスポーツとかいろいろと楽しみはありますが、ある程度の年齢になったら楽しみもかぎられてきますから。
当院の患者様も、定年を迎えてのんびりと旅行に行っても、旅先でおいしいものを食べられなかったら楽しみは半減するとおっしゃっていましたね。
考えてみたら、人間の生活の基礎である「衣食住」と三大欲求「食欲・性欲・睡眠欲」の二つに共通しているのは「食」だけなんですね。
食べることが人間として大事なことなのだと改めて感じます。
今は食べものにしたってやわらかいものや飲み込むだけで栄養を摂れるものもありますが、それは「栄養摂取」であって「食事」ではありません。
咬んで楽しむ食事こそが、人間にとって大事だと思います。
よく、肥満はよく咬まずに飲み込むからなるといわれますが、よく咬まないのではなく、咬めないんです。
咬み合わせが悪かったり、歯並びが悪かったりの理由でよく咬めず、そのまま飲み込んでしまったり、あるいはよく咬めないから味がわかりにくくて味の濃いものをばかり食べてしまったりで太ってしまうのです。
しっかりと咬めて食事ができれば楽しいし、健康にもなれます。
当院は歯を白くすること以上に、歯としての本来の機能を整えることを優先して治療を行っています。
自分の未来のため、健康でいたいと思う方は一度相談していただければと思います。